痰の観察


◆痰とは?

気管、気管支、細気管支、

肺胞などの気道の粘膜から分泌される粘液です。

口腔、鼻腔、咽頭、喉頭の粘膜

からの分泌物も痰に含まれている場合もあります。

埃や塵、細菌、アレルゲン、

ウィルス、血液成分、細胞成分

などが含まれている場合もあります。

 

口、鼻からの分泌物は通常は

無意識に呑み込んだりティッ

シュなどで鼻をかんだり、

口からだしたりして体外へ出しています。

医療機関などで検査する痰は

主に咽頭、喉頭、下気道から

の分泌物を対象にしています。

特に気管支や肺の状態を知る

上では大切な検査になります。

 

 

◆痰の観察でわかること

●痰の量

正常な痰の量

1日の量が100ml前後~200ml前後

約100mlと記載された文献が多かったです。

 

●痰の性状

さらさら・ねばねば・どろどろ

泡状など痰の性質にもいろいろあります。

 

粘液性痰

粘り気がある痰。

 

漿液性痰

サラサラな痰。

水っぽい(水様性)痰、粘り気があまりない。

 

膿性痰

膿のような痰。

 

血性痰

血液の混ざった痰。

 

泡沫性痰

泡を多く含んだ痰。

 

粘液膿性痰

粘り気のある痰に膿のような痰が加わった痰。

  

●痰の色

痰に含まれている成分により色も変化します。

風邪などをひいて痰の量が多く

なると、少し黄色(白黄色)くなります。

これは感染により白血球が菌を

攻撃しようとしその残骸が痰に

混ざることにより黄色(淡黄色)くなります。

血液が混入している場合は錆色

鮮紅色、暗赤色、茶色など同じ

血液でも出血の部位や量などで

色も変化していきます。

病変の大まかな位置を示す指標にもなります。

 

●臭気

組織の崩壊が強い場合は、

腐敗臭を呈することもあります。

 

 

◆痰の量が多くなる主な原因

・細菌やほこりなどの侵入

・誤嚥による異物の侵入

・喫煙

・気管カニューレや気管内

チューブなどを挿入している時

・呼吸器感染症や呼吸器疾患

・手術直後 など

 

感染やほこり、アレルギー、

喫煙などにより気道内が刺激

されると分泌物が過剰に生産

され、痰が多くなります。

 

疾患としては、慢性気管支炎

気管支拡張症、気管支喘息などがあります。

量が多すぎる場合は、ブロンコ

レア(気管支漏)などがあります。

 

 

◆痰の性状で考えられる主な原因

●漿液性の痰

ウィルス感染、アレルギー、

肺水腫や気管支喘息の発作時など。

ほこりや煙などで気道粘膜が刺激を受けた時など。

 

●粘液性の痰

喫煙や気管支喘息など。

 

●膿性の痰

細菌による感染症や肺化膿症

気管支拡張症、感染による肺炎など。

 

●泡を含む痰

血液を含んでいる場合は

肺結核、肺がん、肺うっ血

肺水腫、心不全などが考えられます。

 

 

◆痰の色で考えられる主な原因

●白色透明

細菌以外の感染の可能性や、

気管支炎、気管支喘息の時にも見られます。

 

●黄色

白色がかった黄色(白黄色)

や少し緑色を帯びている黄色

(緑黄色)痰もあります。

主に気道の感染の時に見られます。

感染症以外には慢性気管支炎や

気管支喘息などでも見られることがあります。

 

●緑色又は黄緑色

緑色又は黄色がかった緑色の痰。 

緑膿菌などの感染症や蓄膿症等

などの時にみられます。

蓄膿症の場合は鼻から喉の奥に

流れ込んで気管等の痰と一緒に

喀出されることがあります。

 

●褐色

やや黒みをおびた茶色。  

気管支拡張症、肺結核、

肺梗塞、肺がんなどのときに見られます。

 

●錆色

鉄についた錆のような色。

赤みがかった褐色。

感染による肺炎(特に肺炎

球菌肺炎)、肺化膿症

心不全、肺うっ血などの時にみられます。

 

●ピンク色

肺うっ血や心不全等の時にみられます。

 

●鮮紅色

鮮やかな赤色。

多量の血液を含む。

喀血の時の色。

肺結核、肺がん、気管支拡張症

などの時にもみられます。

血性痰(血痰)は上記では、

褐色、錆色、ピンク色、鮮紅色の痰が含まれます。

色が白色や透明で、粘液性痰や

漿液性痰は健常者にも見られます。

 

 

◆臭気で考えられる主な原因

●腐敗臭 

悪性腫瘍や肺化膿症など。

 

●アセトン臭 

糖尿病に合併した感染症など

 

同じ疾患でも病状の変化で痰の

色や性状が変わることもあります。

例えば、気管支炎の初期症状は、

さらさらした漿液性の白い痰で

始まり、症状が進むにつれて、

どろっとした粘液性の痰に変わることもあります。

細菌などが感染した場合は、

黄色や緑っぽくなったりします。

 

感染症でも病原体の種類によって

痰の性状や色が違う場合もあります。

又随伴症状、例えば発熱や呼吸

困難、咳などの症状も合わせて判断されます。

受診する場合は、痰の量や色、

性状、随伴症状、時期等が重要な

診断の助けになります。

 

痰の量、性状、色、臭いの原因は

ここで記載した以外にもいろいろあります。

一般的によく知られている症状や

原因についてまとめてあります。

 

上気道とは?

口、鼻、咽頭、喉頭までの部分。

 

下気道とは?

気管、気管支、細気管支、肺胞までの部分。

 

機械的刺激による血性痰

咳が長く続いたり強い咳払いや

咳が重なると気道の粘膜が傷つ

く場合があります。その場合は

粘膜から出血する場合もあります。

これは機械的刺激による出血で心配のないものです。

特徴は、排出された痰(喀痰)

の表面に血液が線状に付着して

いる場合が多くみられます。

回数も多くなく数回で消失する場合が殆どです。

繰り返し起こるようであれば、診察が必要です。


呼吸器の管理ケア 項目一覧


◇参考文献

書籍

「最新医学大辞典」

「今日の臨床検査」

「新検査マニュアル」

「はじめてであう小児科の本」

 

インターネット〉

ウィキーペディア

ja.wikipedia.org/wiki/上気道

ja.wikipedia.org/wiki/下気道