人工呼吸器装着時の合併症と対策


ここでは主に介護職の方が在宅

で侵襲的人工呼吸療法を受けて

いる方に対するケアについてまとめてあります。

介護職員等の方がケアする場合

の対象者は状態が安定している方になります。

 

人工呼吸器装着時の主な合併症

には、人工呼吸器関連肺炎

(VAP)、肺胞内圧の上昇に

よる損傷、無気肺、多臓器へ

の影響、酸素中毒、気道の

トラブル、精神的ストレスに

よるもの等、様々な合併症があります。

ここでは人工呼吸器関連肺炎

(VAP)についてまとめてみました。

 

◆人工呼吸器関連肺炎(VAP)とは?

人工呼吸器関連肺炎とは、人工

呼吸器を装着して48時間以降

に新たに発生した肺炎のことです。

人工呼吸器装着以外の特別な

原因がなく発生する肺炎になります。

 

 

◆原因

大別すると誤嚥によるよる肺炎

と細菌吸入による肺炎があります。

誤嚥による肺炎は鼻腔、口腔、

咽頭等の分泌物や胃内の内容物

等がカフと気管壁の隙間を通り

気管・肺へ流入することで発生します。

栄養チューブを挿入している

場合はチューブを伝って細菌が

気管内へ侵入する場合もあります。

 

細菌吸入による肺炎は、呼吸

器回路の洗浄・消毒・滅菌

乾燥が不十分だった場合や

気管内吸引時の不潔操作、

呼吸器回路内に侵入した細菌

を吸入することで発生します。

呼吸器回路内に細菌等が侵入

する経路には呼吸器回路内の

水抜き、回路等の交換、加温

加湿器の滅菌水の補給等を

不適切な操作で行った場合に

微生物が侵入します。

加温加湿器の汚染された水は

結露となって呼吸器回路内に付着します。

加温加湿器の滅菌水に微生物が

侵入した場合は細菌が繁殖し易くなります。

汚染されたネブライザーの溶液

(エアロゾール)を吸入すること

でも肺炎を発生します。

 

肺炎を発生しやすい病態もあります。

糖尿病の患者さんやステロイド剤

等を使用している方等は人工呼吸

器関連肺炎に罹りやすくなります。

 

 

◆人工呼吸器関連肺炎対策

人工呼吸器関連肺炎の原因は

大別して誤嚥によるよる肺炎

と細菌吸入による肺炎があります。

それぞれの原因を取り除く又は

最小限にすることで肺炎を防止します。

 

●肺への流入を防ぐ

適正なカフ圧保持とカフ上部の吸引

人工呼吸器装着時の誤嚥(不顕

性誤嚥・サイレントアスピレーシ

ョン)の主な原因は気管カニュ

ーレのカフ上部に貯留している

分泌物が気管壁とカフの隙間や

カフの皴を伝って肺の方へ流入することで起きます。

カフ上部に存在する分泌物は

カフにより肺への流入を抑え

ていますが、カフ圧が適正でも

完全に防ぐことは困難とされています。

カフ圧が低下している場合は

より多くの分泌物が隙間を通っ

て肺の方へ流れ込みます。

肺への流入を少しでも抑える為

の対策としては、カフ圧を適正

に保持し気管内吸引や口腔ケア

などの前後にはカフ上部に貯留

している分泌物を吸引しておきます。

又、口腔や鼻腔、咽頭等の分泌

物を適時吸引しておきます。

特に口腔内は唾液が溜まり易い

為、吸引の回数は他の部位より多くなります。

 

体位の調整

肺炎の予防につながる体位は、

禁忌でなければ上体を30°~

45°挙上することが推奨されています。

仰臥位だと胃の内容物が口腔の方へ逆流しやすいためです。

 

その他の予防・対策

カフの構造や材質等によっては

肺への垂れこみをより低減するカフもあります。

 

●肺炎の原因となる細菌などを少なくする

肺炎の原因となる細菌などを

できるだけ少なくします。

口腔、咽頭、胃などに存在する

細菌などを少なくする為には、

口腔内の清潔保持が欠かせません。

又、口唇や口腔周辺、鼻腔等も

清潔にしておきます。

吸引や経管栄養等のケアする

時は清潔操作を徹底します。

 

カフ上部に貯留した分泌物の吸引方法

吸引器を使用する方法とシリン

ジを使用する方法があります。

吸引器を使用する場合は吸引器

の接続管と気管カニューレの

サイドチューブ(吸引ライン、

サクションライン)をつないで吸引します。

吸引圧は痰などの吸引と同様に

150mmHg以下で吸引します。

シリンジの場合は5ml又は10ml

のシリンジを使用してゆっくりと吸引します。

 

カフ圧確認のタイミング

気管内吸引や体位変換、口腔ケアなどの際に確認。

続きはこちらです→ 口腔内の清潔保持

 




人工呼吸器装着時の介護 項目一覧


◇参考文献

 書籍

「呼吸サポートチームのための呼吸管理セーフティーBOOK」メディカ出版 p25~p26

「人工呼吸ケアのすべてがわかる本」照林社 p228~p229

「器械的人工呼吸マニュアル」ナース専科 文化放送ブレーン p115~p116

「実践できる在宅看護技術ガイド」学研 p151

 

インターネット

日本集中医療医学会HP内

人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010改訂版

www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf

厚生労働省HP内

人工呼吸器関連肺炎

www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0315-4f51.pdf

www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0315-4f52.pdf