介護保険制度の持続可能性を確保する為の具体策


(1)2割負担者のうち、特に所得の高い層の負担割合を3割とする(介護保険法)

制度が持続できるように2割負担者のうち、特に所得が高い層

の負担割合が3割になります。(平成30年8月から施行)

 

負担の上限は月額¥44,400になります。

上限額を超えたら高額介護サービス費制度により、差額分が払い戻されます。

 

(介護保険法第49条の2及び第59条の2関係)

介護給付及び予防給付について、一定以上の所得を有する

第一被保険者に係る利用者負担の割合を、その費用の

100分の30とすること。

 

〇具体的な基準

合計所得金額が220万円以上ありかつ、年金収入とその他

合計所得金額の合計が単身世帯の場合は340万円以上の人。

夫婦世帯の場合は463万円以上になります。

単身で年金収入のみの場合は344万円以上になります。

年金収入と年金以外の所得の合計が単身世帯の場合は

340万円以上。

夫婦世帯の場合は463万円以上で、年金以外の所得金額の

合計が220万円以上の世帯が3割負担になります。

 

3割負担の対象者の具体的な基準は政令事項になります。

 

合計所得金額とは?

給与収入や事業収入等から給与所得控除や必要経費を控除した額

 

 

(2)介護納付金への総報酬割の導入(介護保険法)

(平成29年8月から段階的に適用、32年度から全面実施)

 

医療保険者は第2号被保険者(40~64歳)の医療保険料

と一緒に介護保険料も徴収しています。

第2号被保険者(40~64歳)が納めている介護保険料

は、介護納付金として各医療保険者が第2号被保険者の負担

すべき費用を社会保険診療報酬支払基金に一括納付しています。

 

第2号被保険者の保険料は医療保険の加入者数(第2号被保険

者の人数)に応じて介護納付金が決められる仕組みになって

います(加入者割)。

これを被用者保険の保険者間では報酬額に比例して負担する

仕組み(総報酬割)が導入されはじめました。

(平成29年8月から段階的に適用され、32年度から全面実施)

 

*被用者保険の保険者には健保組合、協会けんぽ、共済組合等があります。

 

*総報酬割の導入は国保は除外されます。

 

*介護保険料は40歳になったら健康保険や国民健康保険の

医療保険料と一体的に徴収されます。

 

*第2号被保険者(被用者保険)の負担する介護保険料は

医療保険料と同じく、原則、事業主と1/2ずつ負担します。

 

総報酬割の導入により、総報酬額が多い保険者は介護納付金の

負担額が多くなり、

総報酬額の少ない保険者は負担額が少なくなります。

 

全面的に総報酬割が導入された場合に影響を受ける被保険者数

*平成26年度実績ベース

負担増が約1,300万人

負担減が約1,700万人

 

 

 

介護納付金について

介護保険料は40歳になったら国民の全員が負担することに

なっています。

40歳から64歳までの被保険者を第2号被保険者といいます。

65歳以上の被保険者を第1号被保険者といいます。

第2号被保険者の介護保険料は、医療保険と一緒に徴収されています。

保険料を徴収している各医療保険者は、第2号被保険者が負担する

介護保険料を社会保険診療報酬支払基金に一括納付しています。

この納付金を介護納付金といいます。

社会保険診療報酬支払基金に納付された介護納付金は

介護給付費(28%)として各市町村に交付されます。

 

各医療保険の保険者

国保の場合は市区町村、被用者保険の場合は、

健康保険組合(健保組合)、全国健康保険協会(協会けんぽ)

共済組合など。

 

介護納付金の計算方法

各保険者の介護納付金は介護給付費を基に算出されます。

介護給付費の総額の28%が第2号被保険者が支払う保険料になります。

介護給付費の総額の28%を第2号被保険者の総数で割れば

2号被保険者の一人当たりの保険料が算出されます。

これが基準負担額になります。

各医療保険者の介護納付金は、加入者割と総報酬割の計算で

算出された金額になります。

国保の場合は全額加入者割で、基準負担額に

国保に加入している人数を乗じた金額になります。

被用者保険では加入者割と総報酬割で算出された金額になります。

平成29年8月からは加入者割と総報酬割1/2ずつ、

31年度からは加入者割1/4、総報酬割3/4、32年度からは

全面的に総報酬割が導入されます。

 

*国保の保険者は市区町村

*被用者保険の保険者は健康保険組合(健保組合)、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合など。

 

介護給付費の財源

介護給付費は

国庫負担 25%

都道府県 12.5%

市町村 12.5%

第2号被保険者の保険料(40~64歳)28%

第1号被保険者の保険料(65歳以上)22%

で賄われています。

 

総報酬割について

保険料を算出する為の計算方法の一つです。

介護保険制度では各医療保険者が納付する介護保険料(介護

納付金)を算出する時に総報酬割と加入者割が導入されています。

報酬割は報酬額に比例した負担額になります。

平成29年7月迄は全面的に加入者割が導入されていました

が、平成29年8月からは総報酬割が段階的に適用され、

32年度から全面実施される予定です。

急激な負担増にならない様に段階的に導入されています。

平成29年8月からは1/2、31年度からは3/4、32年度からは

全面的に総報酬割が導入されます。

介護納付金の総報酬割が導入されるのは被用者保険の保険者で

ある、健保組合や協会けんぽ、共済組合になります。

国保は対象外です。

影響を受けるのはそれらに加入している第2号被保険者

(40~64歳)になります。

総報酬額とは健保組合や協会けんぽ、共済組合等に加入している

第2号被保険者の1年間の給与等(標準報酬月額)と賞与(標

準賞与額)の合計になります。

健保組合、協会けんぽ、共済組合等の全員の総報酬額の合計

に対して、各保険者の総報酬額に応じて割合が決まります。

例えば、A保険者の総報酬額が5億円、B保険者の総報酬額が

15億円、C保険者の総報酬額が10億円の場合、

3つの合計は30億円になります。

介護給付費を基に算出された介護納付金の各保険者の負担割合は、

A保険者は5/30(1/6)、

B保険者は15/30(1/2)、

C保険者は10/30(1/3)になります。

例えば、介護納付金が2400万円で全額を総報酬割にした場合の金額は、

A保険者は1/6なので、400万

B保険者は1/2なので、1200万

C保険者は1/3なので、800万

になります。

 

*後期高齢者医療制度での保険料の算出にも総報酬割が導入されています。

 

加入者割について

保険料を算出する為の計算方法の一つです。

介護保険制度では各医療保険者が納付する介護保険料(介護

納付金)を算出する時に総報酬割と加入者割が導入されています。

加入者割は各保険者の加入者数で負担額が決まります。

医療保険者は国が介護保険法に基づき第2号被保険者の一人

当たりの基準負担額に、各医療保険に加入している第2号

被保険者数を乗じた金額を介護納付金として一括納付しています。

この基準負担額に各医療保険に加入している第2号被保険者の

人数を乗じた金額が介護納付金になります。

個人が支払う介護保険料は報酬額に関係なく同じになります。

この方法で算出された金額では、報酬額の多い保険者では

保険料の負担割合は小さく、報酬額の少ない保険者では負担割合は大きくなります。

各医療保険者の負担額の割合にばらつきが生じたため、平準化

する為に総報酬割が導入され始めました。

 

医療保険とは?

医療機関等を利用した時に支払う医療費等を、一部または全額

を保険者が給付する仕組みの保険を医療保険といいます。

公的医療保険と私的医療保険の2種類があります。

ここでは公的医療保険についてまとめてあります。

 

公的医療保険制度について

日本の場合は原則、国民皆保険とされています。

強制加入になります。

全ての国民(一部を除く)が公的医療保険に加入することが

法律で義務付けられています。

医療保険制度は被用者保険(職域保険)と国民健康保険(地域

保険)、後期高齢者医療制度に大別されています。

 

被用者保険の種類

被用者保険には健康保険(一般被用者保険)、特定被用者保険

自営業者保険があります。

健康保険(一般被用者保険)の保険者には健康保険組合(健保

組合)と全国健康保険協会(協会けんぽ)があります。

健康保険組合(健保組合)に加入している人は大企業の従業員

とその被扶養者で、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入

している人は、中小企業の従業員とその被扶養者です。

特定被用者保険には共済組合と船員保険があります。

共済組合には国家公務員共済組合と地方公務員共済組合、

私立学校教職員共済制度があります。

共済組合の保険者は各共済組合になります。

被保険者は公務員や教職員などとその被扶養者になります。

船員保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)になります。

被保険者は船員とその被扶養者になります。

自営業者保険の保険者は国民健康保険組合になります。

被保険者には建設業や医薬品業などの特定の業種に従事し、

国民健康保険組合をつくることが認められている一部の65歳

未満の自営業者などになります。

*地域保険での国民健康保険の保険者は市区町村になります。

 

地域保険の種類

地域保険には国民健康保険(市町村国保)と前期高齢者医療

制度があります。

国民健康保険の保険者は市区町村になります。

被保険者は65歳未満の他の医療保険制度に加入していない

人になります。

自営業の人やその家族、農業の人やその家族、被用者保険に

加入していない人やその家族、無職の人等になります。

前期高齢者医療制度の保険者は市区町村になります。

被保険者は被用者保険や国民健康保険に加入している

65歳~74歳までの前期高齢者になります。

前期高齢者医療制度は被用者保険や国民健康保険の医療費負担

を調整する為の制度になります。

65歳~74歳までの前期高齢者については、保険者間(市区

町村や協会けんぽ、健保組合、共済組合など)で財政調整を

行う仕組みになっています。

 

国民健康保険(国保)

国民健康保険には地域保険と職域保険があります。

地域保険での国民健康保険は市町村国保と呼ばれ、

保険者は市区町村になります。

職域保険での国民健康保険は職域国保と呼ばれ、

保険者は国民健康保険組合になります。

 

国保と社保

国保と社保は医療保険事務上の略称になります。

国保は国民健康保険の略、社保は被用者保険等の略。

 

後期高齢者医療制度

平成20年4月から新たに創設された制度になります。

前期高齢者医療制度と異なり、後期高齢者(75歳以上)

だけの独立した医療制度になります。

その為、後期高齢者医療制度に加入する時は他の医療保険制度

から脱退する必要があります。

後期高齢者医療制度を運営しているのは特別地方公共団体で

ある後期高齢者医療広域連合になります。

後期高齢者医療制度の保険者は各都道府県に設けられた

後期高齢者医療広域連合になります。

全ての市区町村が加入しています。

後期高齢者医療広域連合が主体になり、市区町村と協力して

財政や制度などの運営をしています。

被保険者が負担する保険料は後期高齢者医療広域連合が決定します。

市区町村は保険料の徴収や申請、保険証の交付など窓口業務

を主に担います。

被保険者の方は、市区町村に保険料を納付します。

被保険者は原則、75歳以上の人が対象になります。

65歳~75歳未満で一定の障害のある人も対象になります。

75歳になると、それまで加入していた国保や健保などから

移行となります。

特別な手続きは不要で、75歳の誕生日までに住んでいる住所

に役所から保険証が郵送または手渡されます。

それまで加入していた医療保険制度は利用できなくなります。

加入していた医療保険を脱退する時は各保険者の指示に従います。

国保であれば市区町村、被用者保険であれば健保組合や協会

けんぽ等に問い合わせます。

 

医療扶助について

医療扶助は公的扶助制度の一つになります。

生活保護の受給者は国民健康保険や後期高齢者医療制度の

被保険者から除外されています。

生活保護受給者の医療費は一部を除き全額を医療扶助で負担

しています。

生活保護を受けている方で公的医療保険の対象者でない人は、

医療保険制度ではなく、公的扶助制度の医療扶助により

医療が保証されています。

指定された医療機関を受診することが必要になります。

 

保険診療の流れ

①被保険者が医療保険者に保険料を支払う

会社員であれば毎月給料から差し引かれる。

 ↓

②被保険者が保険医療機関などを利用

医療機関などが診療サービスを提供。

 ↓

③被保険者が費用の一部を負担

保険の種類により1割~3割負担。

  ↓

④医療機関などが審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金)

に診療報酬の請求をする

  ↓

⑤審査支払機関は医療保険者に審査済みの請求書を送付

 ↓

⑥医療保険者が審査支払機関に請求金額の支払いをする

 ↓

⑦審査支払機関が医療機関などに診療報酬の支払いをする

  

*保険医療機関には病院、診療所、調剤薬局等があります

 

介護保険料の場合は、社会保険診療報酬支払基金が介護納付金

として医療保険者から徴収した保険料を、介護給付費交付金

として市町村に交付します。

 

 

 

 



◆参考文献

インターネット

厚生労働省サイト内

老健局 重点事項説明資料

平成30年1月18日(木)全国厚生労働関係部局長会議

1 介護保険制度の見直しについて p9 p10

http://www.mhlw.go.jp/topics/2018/01/dl/tp0115-s01-12-01.pdf

介護保険制度の見直しについて p30 p33

http://www.mhlw.go.jp/topics/2017/01/dl/tp0117-k01-05-02p.pdf

費用負担(総報酬割) p6  p7 p8

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000140159.pdf

総報酬割のイメージ(仮に1/2とした場合)

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000wspu-att/2r9852000000wxvu.pdf

医療保険について

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken01/dl/01a.pdf

我が国の医療制度の概要

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken01/dl/01a.pdf

高齢者医療制度

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/koukikourei/index.html

後期高齢者医療制度について

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-35.html

生活保護の医療扶助について

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/dl/s1104-3b_0002.pdf

 

内閣府サイト内(http://www.cao.go.jp/)

医療保険制度・介護保険制度の見直しに関する検討状況(主要事項)

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/1125/shiryo_06-2.pdf

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/1125/shiryo_06-1.pdf

社会保障の給付と負担等について

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/280915/shiryou3-1.pdf

社会保障

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/290425/shiryou4-1.pdf

内閣官房HP内

介護納付金について

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gyoukaku/H27_review/H28_fall_open_review/siryo/2.pdf

 

ウィキペディアHP内

国民健康保険

https://ja.wikipedia.org/wiki/国民健康保険

健康保険組合

https://ja.wikipedia.org/wiki/健康保険組合

全国健康保険協会(協会けんぽ)

https://ja.wikipedia.org/wiki/全国健康保険協会

共済組合

https://ja.wikipedia.org/wiki/共済組合

公的扶助

https://ja.wikipedia.org/wiki/公的扶助

介護保険

https://ja.wikipedia.org/wiki/介護保険

医療保険

https://ja.wikipedia.org/wiki/医療保険

 

けんぽれんサイト内

医療保険制度の基礎知識

http://www.kenporen.com/health-insurance/m_knowledge/

 

社会保険診療報酬支払基金サイト内

社会保険診療報酬支払基金法

http://www.ssk.or.jp/goannai/kikin/soshikigaiyo/soshikigaiyo_10.html