気管カニューレからの吸引:吸引の実践手順 例


気管切開をされてご家庭で療養中

の方に対しては、医療機関や訪問

看護ステーションなどから、訪問

看護師が指導にあたっていると思います。

必要物品や物品の管理に関しての

説明や指導もされていると思いま

すので詳細に関しては担当の看護

師などにお尋ねください。

一つの例として参考にして頂ければと思います。

 

◆吸引器を作動させるまでの操作(滅菌手袋)

吸引器を作動させるまでの滅菌

操作を重点に、滅菌手袋を使用

するケースと、滅菌済みの鑷子

を使用するケースに分けて簡単にまとめてみました。

 

●滅菌手袋を使用する場合

①実施者はゴム手袋などを着用

滅菌済みの吸引カテーテルを

把持する方(通常は利き手)に

滅菌手袋を着用し片方は未滅菌の手袋を着用。

 

先に未滅菌の手袋を着用してから

滅菌の手袋を着用します。

一人で滅菌手袋を着用する場合は

手袋の手首の部分だけに触れて着用します。

通常は手首の部分は反転した状態になっています。

内側が表になっていますので、

その部分を未滅菌を着用した手で持って着用します。

滅菌手袋を着用した後は滅菌され

ている吸引カテーテル以外の物に

は触れないように注意します。

 

②吸引カテーテルを袋から全部出す

未滅菌の手袋を着用した手で

前もって接続してある吸引カテ

ーテルの接続部位を把持し、

カテーテルを袋から全部出します。

気管内に挿入するカテーテルの

部分を滅菌手袋を着用した手で

把持しておきます。

 

③吸引器をONにする

接続部分を把持している方の

親指等で接続部分の少し手前

吸引カテーテルの境目あたりを

親指などで折り曲げ塞いでおきます。

カテーテルに調節口がついて

いる場合は開放しておきます。

空いている指でスイッチを入れます。

 

●滅菌済みの鑷子を使用する場合

①未滅菌の手袋の着用

滅菌済みの鑷子を使用する場合

は未滅菌の手袋を両手に着用。

 

②吸引カテーテルを袋から全部出す

吸引カテーテルの接続部位を

把持し、カテーテルを袋から全部出します。

気管内に挿入するカテーテルの

部分を、鑷子で把持しておきます。

 

③吸引器をONにする

接続部分を把持し親指で折り

曲げた状態で空いている指で

スイッチを入れます。

 

ここまでの手順で注意することは

滅菌カテーテルや鑷子、滅菌手袋

が不潔にならないようにすることです。

不潔にならないようにすること

とは、滅菌部分に滅菌以外の物が

触れないようにすることになります。

 

細かい手順は個人によって多少

違いはありますので、やり易い

方法で実施して下さい。

要は、滅菌の部分を不潔にしないことです。

最初はやりにくい部分もあります

が、慣れてくると手際よく出来るようになります。

 

 

◆吸引カテーテルの通水

吸引前の準備と手袋を着用して

吸引器のスイッチをONにして

から直接、対象者の方の痰等の

吸引を実施することになります。 

 

①吸引カテーテルの把持

滅菌手袋又は滅菌鑷子で吸引

カテーテルの先から1/3~1/4

あたりを把持しておきます。

不潔にならず、操作しやすい箇所を把持します。

 

②滅菌水の吸引(通水)

親指などで塞いでいた吸引カテ

ーテルを開放して滅菌水を1~2回吸引します。

調節口がついている吸引カテー

テルを使用する場合は吸引時は

指で調節口を塞ぎます。

 

*通水の目的

・機械が正常に作動するか点検

・吸引圧の確認

・カテーテルに漏れや破損はないか点検

・カテーテルの滑りを良くする

・分泌物の通りを良くしたり付着し難くする等

消毒液で浸しておいた場合はカテ

ーテル内の消毒液を流す目的もあります。

 

痰等の吸引後はカテーテル内を

洗い流して綺麗にしておきます。

 

 

◆気管カニューレ内(人工気道内)の吸引

痰の量や留まっている部位にも

よりますが痰がカニューレ内に

存在している場合が多いので、

先に気管カニューレ内(人工

気道内)を吸引しておきます。

 

①カテーテルを把持する

把持する部位は挿入する側の

カテーテルの先端から

気管カニューレの長さプラス

約1cmの長さと同じ箇所を把持しておきます。

 

②吸引圧をかけずに挿入する

挿入するときはカテーテルを指

で折って塞ぐか、調節口を開放

にして陰圧をかけずに挿入します。

低酸素血症や気道内粘膜の損傷

などの合併症を防止する為です。

把持している部位が気管カニュ

ーレの入口に達する迄ゆっくり挿入します。

 

③挿入後、陰圧をかけて吸引する

カテーテルを塞いでいた指を

放して(又は調節口を塞ぐ)陰圧をかけます。

痰などの吸引音が聴こえたら

吸引カテーテル自体を指で回し

ながら同時に小さく円を描く様

にカテーテル全体を回して、

ゆっくり引き上げていきます。

 

鑷子の場合はカテーテル全体を

ゆっくり回して引き上げていきます。

 

●吸引方法

吸引時のカテーテルの操作方法

は実施者によって多少違いはあります。

又分泌物(痰も含む)の性状に

よっても異なる場合もあります。

だいたい以下の様な吸引方法があります。

・カテーテル自体を把持している指(通常親指と人差し指)で回す

・小さく円を描くようにしてカテーテル全体を動かす

・上記二つの動作を同時に実施

・カテーテルを引き上げるだけ

・人工気道内の場合は多少上下に動かす

 

●吸引時のコツ

挿入後、陰圧をかけながら引き

もどしていく時に痰等の吸引音

が聴こえたら引き戻しを一時的

に止め、カテーテル自体を指で

回したり、カテーテル全体を

小さく円を描くように動かしてみます。

ある程度吸引音が聴こえなくな

ったら再びゆっくり引き上げます。

 

細かい手順は個人によって多少違

いはありますので、やり易い方法で実施して下さい。

 

 

◆続けて吸引する場合

1回の吸引で不十分な場合や

吸引が引きがねとなって咳が

誘発され痰が再びカニューレ内

にあがってくる場合もあります。

そういう場合は続けて吸引する必要があります。

一旦引き上げたカテーテルは

アルコール綿などで拭いたあと

滅菌水で通水してから挿入します。

その後は1回目と同じ操作で吸引します。

 

気管カニューレ内(人工気道内)

吸引の場合は気管壁を傷つける

心配はありませんが、吸引時間や

挿入の長さには注意します。

気管カニューレ内の吸引は殆どが

5秒~10秒以内で出来ると思います。

挿入する長さはカニューレの長さ

に合わせるか1cmほど深く挿入します。

事前にカニューレの長さを把握しておきます。

挿入する長さにあわせて吸引カテ

ーテルの把持する箇所を決めて

おくと気管壁を傷つけるリスクが低くなります。

 

 

◆吸引後の操作

①アルコール綿又は滅菌ガーゼ等でカテーテルの外側を綺麗にする

1回の吸引が終わったら、

その都度外側、内側を綺麗にします。

アルコールにアレルギーのある人

滅菌ガーゼや他の消毒薬を使用。

滅菌ガーゼは滅菌水で湿らせて

使用すると拭きやすい。

続けて吸引する場合は消毒効果

のあるアルコール綿などを使用。

 

②滅菌水を吸引する(通水)

カテーテル内も洗い流してきれいにします。

 

1回の吸引で、ある程度痰などが除去されたら終了です。

 

③電源を切る

通水が終わったら、吸引カテー

テルを指で塞ぐ又は調節口を

開放して電源をOFFにします。

その後、吸引カテーテルを取り

外し消毒薬に浸すか破棄します。

 

細かい手順は個人によって多少

違いはありますので、やり易い

方法で実施して下さい。

要は、滅菌の部分を不潔にしないことです。

最初はやりにくい部分もあります

が慣れてくると手際よく出来るようになります。

 

吸引が終わったら対象者の方の

様子を観察し問題がなければ、

後片付けになります。

廃棄するもの、洗浄、消毒する

ものなど必要に応じて対処します。

 

続きはこちらです→ 吸引時の注意点

 


気管カニューレからの吸引 項目一覧

滅菌操作について 

気管カニューレは直接気管内に挿入される管です。

外から気管を切開して穴をあけカニューレを挿入します。

続きは こちら です。

 

必要物品等(在宅ケア用)

主な必要物品等、吸引器、吸引カテーテル

カテーテルを浸しておく消毒液、滅菌蒸留水又は滅菌精製水

続きは こちら です。

 

吸引前の準備

実施者の準備、必要物品の確認と配置、吸引器の準備

対象者の方の準備、続けて吸引する場合

詳細は こちら です。

 

吸引の実践手順

吸引器を作動させるまでの操作、吸引カテーテルの通水

気管カニューレ内(人工気道内)の吸引、吸引後の操作

詳細は こちら です。

 

吸引時の注意点

吸引時間、挿入する長さ、気管内(人の気管内)の場合

詳細は こちら です。

 

家庭での廃棄物の処理方法など

廃棄するもの、処理責任、回収方法

具体的な処理方法、排液水などの廃棄

詳細は こちら です。

 

吸引後の物品等の管理

消毒・洗浄、吸引カテーテル、吸引瓶など

次回への準備

続きは こちら です。

 


◇参考文献

書籍

「最新医学大辞典(医歯薬出版株式会社)

「ナース必携最新基本手技AtoZ」EXPERT・NURSE  小学館

「写真でわかる基礎看護技術① 看護技術を基礎から理解!」インターメディカ 

「家庭医学大百科」主婦の友社

 

インターネット

「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)」