陽圧式人工呼吸器の換気モード


◆陽圧式人工呼吸器の換気モードについて

自発呼吸があるかないかによっ

て設定する換気モードは異なります。

自発呼吸がある場合はその程度

によっても異なります。

疾患や病態などによっても異なってきます。

 

種々の換気モードの基本となる

ものは間欠的陽圧換気(IPPV)になります。

間欠的に気道に陽圧(従量式

従圧式)をかけて強制換気を行う方法です。

肺を十分膨らませたあとは

(設定した圧や量に達したら)

肺や胸郭の弾力性で自然に収縮

し呼気へと移行します。

呼気は大気(外気)へ開放されます。

現在は単独で設定されることは殆どないようです。

 

換気モードの設定は人工呼吸器の

種類により多少異なりますが、

基本的な考え方は同じです。

個人に合った呼吸器が選択されます。

 

ここでは主な換気モードについて簡単にまとめてあります。

 

◆主な換気モード(動作設定)の種類

在宅では気管カニューレ(気管

切開)による気管切開下陽圧

換気(TPPV)になります。

在宅で使用されている人工呼吸

器の換気方式は、気道内に陽圧

をかける陽圧式人工呼吸器が

多く使用されています。

 

マスクを使用して鼻又は鼻口から

陽圧をかけて換気を行うことを、

非侵襲的陽圧換気(NPPV)といいます。

在宅での人工呼吸器療法は非侵襲

陽圧換気の方が多くなっています。

 

 

◆陽圧式人工呼吸器の換気方法:空気(又はガス)を送り出す方法

補助/調節換気(A/CMV)

同期式間欠的強制換気(SIMV)

自発呼吸モード(SPONT)

 

 

◆補助/調節換気(A/CMV)

自発呼吸がある場合に選択されます。

補助/調節換気は、補助換気

(AMV)と調節換気(CMV)

の二つの方式が機能します。

 

補助換気(AMV)は患者さん

の吸気努力を感知して強制換気

が開始されます。

患者さんの自発呼吸に依存しています。

 

調節換気(CMV)は、主に

自発呼吸がない場合や安静が

必要な時に利用されます。

自発呼吸に関係なく設定された

とおりに強制換気を行います。

完全に呼吸器に依存した換気方式です。

 

補助/調節換気は上記二つの方式が機能します。

自発呼吸があれば、それに感知

して補助換気が行われ自発呼吸

がなければ調節換気が行われます。

設定された呼吸回数で調節換気

が入るため、自発呼吸の回数が

多くなれば補助換気の回数が増

え過換気のリスクがあります。

 

 

◆同期式間欠的強制換気(SIMV)

自発呼吸がある場合に選択されます。

患者さんの自発呼吸(吸気努力)

を感知して強制換気をかける方法です。

間欠的強制換気(IMV)の欠点

であるファイティングを防止できます。

間欠的強制換気(IMV)は、

強制的換気に加え自発呼吸も出来るモードです。

IMVの欠点は自発呼吸があっ

ても設定した通りの回数で強制

換気を行う為、患者さんの呼気

と呼吸器との強制換気がぶつか

る(ファイティング)リスクがあります。

ファイティングを防止する為の

方法が同期式間欠的強制換気(SIMV)です。

患者さんの自発呼吸(吸気努力)

を感知して補助換気をかける方法です。

最近はSIMVが主流になっています。

 

 

◆ 自発呼吸モード(SPONT)

自発呼吸を主体としたモードです。

自発呼吸が確実にある方に設定します。

強制換気は行われません。

代表的なモードがCPAP

(持続的気道内陽圧)があります。

CPAPは自発呼吸にPEEP

がかかったような状態になります。

吸気、呼気すべての相に一定の

陽圧がかかっています。

他にも、PSV(圧支持換気)があります。

 

PEEPとPSVは付加機能になります。

機種によりモード名が異なったり、無いモードもあります。

 

上記以外にも様々な換気モードがあります。

 

換気モードを選択した後は、

呼吸回数、換気量、吸気圧、

吸気時間、吸気トリガー、

酸素濃度などの設定が必要になります。

又、換気モードに付加した機能もあります。

 

人工呼吸器の原理や換気モード

には色々あり複雑です。

医療機器は常に進歩している為

より自然な呼吸に近づける為に

新しい機能や方法が追加、工夫

されていますが同時に、より

操作しやすく簡便にもなっています。

在宅で使用される人工呼吸器

は医療機関で使用されている

機器よりコンパクトに設計されています。

個人に合った人工呼吸器を選択

し使いこなす事が大切になります。

 

IPPV(間欠的陽圧換気)について*補足

IPPVは現在は単独で設定

されることは殆どないよう

ですが調節換気(CMV)と

ほぼ同じ意味で使われています。

IPPVにPEEPをかける

CPPV(持続的陽圧換気)は

設定されることはあります。

IPPV本来の意味は間欠的

(間隔をおいて)に気道に陽圧

をかけて換気を行うことなの

で、陽圧式の人工呼吸器の換気

モードの多くが当てはまる事になります。

ここでは人工呼吸器での

IPPVを説明していますが

用手的(手動で)にIPPVを

行う場合もあります。

ジャクソンリースやバックバル

ブマスク(アンビューバッグ)

などを使用して手動で気道に

空気を送り込む方法です。

 

間欠的強制換気(IMV)と間欠的陽圧換気(IPPV)の違い

IPPVの回数を減らして

換気の合間に自発呼吸ができる

換気モードがIMV。

 

補助/調節換気(A/CMV)と同期式間欠的強制換気(SIMV)の違い

A/Cの場合は、全ての自発呼吸

(吸気努力)に対して補助換気が

行われますがSIMVの場合は

全ての吸気努力に対して補助

換気が行われるのではなく

1サイクルに1回のみ補助換気が入ります。

例えば1分間に15回設定した

場合は、60秒÷15回で

1サイクルは4秒になります。

同じサイクル中に2回目の吸気

努力があったとしても補助換気

(AMV)は入りません。

1サイクルに吸気努力がない

場合は調節換気(CMV)が入ります。

 

ファイティングとは?

患者さんの呼吸と人工呼吸器の

換気とが合わず人工呼吸器の

回路内圧が上昇すること。

原因には自発呼吸の回復や出現

により患者さんの呼気と人工

呼吸器の換気がぶつかる、

チューブの屈曲や閉塞、

人工呼吸器自体の問題、

設定の問題などがあります。

 

バッキングとは?

人工呼吸器装着時に咳き込むこと。

咳嗽を引き起こす原因として

は気道内の分泌物の貯留、

チューブの位置異常等による

気道粘膜への刺激、呼吸回路

の結露による気道内への逆流などがあります。

咳嗽と人工呼吸器の換気と

ぶつかるとファイティングを起こします。

 

トリガーとは?

患者さんの吸気努力を感知して

空気(ガス)を送リ出す引き金のこと。

トリガー感度を適切に設定する

ことで自発呼吸に合わせた補助換気などが行われます。

 

ウィーニングとは?

人工呼吸器からの離脱を徐々に行うこと。

人工呼吸器から完全に自発呼吸に移行させるまでの過程。

 

●人工呼吸器関連用語・略語

I P P V

侵襲的陽圧換気

Invasive Positive Pressure Ventilation

 

A / C M V 又は A / C

補助/調節換気

Assist/Controll Mechanical Ventilation

又は Assist/Controll

 

C M V

調節換気

Controlled Mechanical Ventilation

持続強制換気

Continuous Mandatory Ventilation

 

A M V

補助換気

Assisted Mechanical Ventilation

 

S I M V

同期式間欠的強制換気

Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation

 

I M V

間欠的強制換気

Intermittent Mandatory Ventilation

 

S P O N T

自発呼吸

Spontaneous Breathing

 

C P A P

持続的気道内陽圧  

Continuous Positive Airway Pressure

*シーパップ

 

P E E P

呼気終末陽圧

Positive End-Expiratory Pressure

*ピープ

 

P S V 又は P S

圧支持換気

Pressure Support Ventilation

続きはこちらです→ 人工呼吸器の付加機能

 




人工呼吸器装着時の介護 項目一覧


◇参考文献 

書籍

「はじめて人工呼吸器」メディカ出版 p22~p29

「ナース必携最新基本手技AtoZ」小学館 p67~p70

「器械的人工呼吸マニュアル」ナース専科 文化放送ブレーン p11~p20

「呼吸サポートチームのための呼吸管理セーフティーBOOK」MCメディカ出版 p224~p226

「気管吸引のガイドライン完全準拠わかる!できる!気管吸引あんしん教育ガイド」MCメディカ出版 p82~p91

「ロールプレイで学ぶ 呼吸ケア・呼吸管理のキーポイント」メディカ出版 p250

「介護職員等のための医療的ケア 喀痰吸引・経管栄養等の研修テキスト」ミネルヴァ書房 p68~p69

「実践できる在宅看護 技術ガイド」学研 p130

「人工呼吸ケアのすべてがわかる本」照林社 p18 p24~p27 p171~p173

 

インターネット

医薬品医療機器情報提供HP内

医療機器の添付文書情報 検索例:人工呼吸器

//www.info.pmda.go.jp/ysearch/html/menu_tenpu_base.html

ウィキペディアHP内

//ja.wikipedia.org/wiki/人工呼吸器