◆中心静脈栄養法とは?
中心静脈栄養法は中心静脈にカテーテルを留置して、必要な
栄養素やエネルギー、水分、電解質などを補給する方法です。
経腸栄養法と違って消化吸収の過程を通らず、直接血管内に
補給されます。
IVH、高カロリー輸液療法、中心静脈栄養法、完全静脈栄養法
などと呼ばれています。
IVH(Intravenous Hyperalimentation)
TPN(Total Parenteral Nutrition )完全静脈栄養法
消化吸収に問題がある場合や消化管の安静が必要な時等に
実施されます。
中心静脈にカテーテル(中心静脈カテーテル)を留置して、
カテーテルを介して栄養や水分などを補給する方法です。
中心静脈栄養法は経口摂取が長期間困難な方に栄養を補給する
方法の一つです。
1日に必要なカロリーを補給するには、濃度の高い輸液が必要
になる為、血管が太く血液量が多い中心静脈から投与する方法
が選択されます。
◆中心静脈とは?
中心静脈栄養法では太い静脈を利用して栄養補給をします。
通常は心臓(右心房)の近くにある上大静脈と下大静脈の太い
血管をさします。
上大静脈や下大静脈内に留置することにより、濃度の高い輸液
(浸透圧の高い輸液) が血管内に注入された場合は、速やかに
希釈されて血管壁への刺激を防ぐことが出来ます。
血液量が多く太い血管のため濃度の高い薬剤を投与することが
可能です。血管から薬液が漏れるリスクも低いため抗がん剤や
カテコラミン類など確実かつ正確に投与しなければならない
薬剤の場合も中心静脈からの方が安全です。
●上大静脈
頭部、頸部、両上肢、胸部(肺、気管支等)など上半身
から還る血液が集まる血管です。
*心臓の静脈は心臓内にある冠状静脈洞から右心房に入ります。
●下大静脈
両下肢、腹部(肝臓、腎臓、脾臓、生殖器など)の下半身から
還る血液が集まる血管です。
◆中心静脈から補給された栄養分などの血液循環
中心静脈(上下大静脈)→右心房→右心室→肺動脈→
肺(ガス交換)→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→
全身の動脈→細動脈→毛細血管(組織液⇔細胞)→
細静脈→全身の静脈→上下大静脈(中心静脈)
上下大静脈(中心静脈)から右心房に入った静脈血は右心室に
移り、肺動脈を通して肺に送り出されます。
肺で酸素と二酸化炭素のガス交換が行われ酸素を多く含んだ
動脈血となります。
酸素と栄養分等を多く含んだ動脈血は左心房に入り左心室から
大動脈を通して全身に送り出されます。
各組織細胞へのガス交換と栄養素や老廃物等の運搬は毛細血管
を通して行われます。
ここで動脈血から静脈血へと変化します。
各組織の細胞に酸素や栄養素などが運ばれた後は、老廃物や
二酸化炭素、還元ヘモグロビンを多く含んだ静脈血となり、
細静脈から徐々に太い静脈へと流れて上下大静脈(中心静脈)
に集まり右心房に還ります。
中心静脈栄養法を意味する英語
TPN (Total Parenteral Nutrition )完全静脈栄養法といいます。
病院などでよく言われている中心静脈は正確にはCV
Central Vein です。
中心静脈に対して普通の静脈注射や点滴などに利用される血管
は末梢静脈になります。
体循環と肺循環
心臓から送り出される血管を動脈、心臓に還る血管を静脈
といいます。
血管内を流れている血液は体循環と肺循環では異なります。
体循環(大循環:左心室から全身へ)の場合の動脈には動脈血が
静脈には静脈血が流れています。
肺循環(小循環:右心室から肺へ)の場合の肺動脈には静脈血が
肺静脈には動脈血が流れています。
肺胞でのガス交換について(外呼吸・肺呼吸)
動脈血は酸化ヘモグロビンが多く、酸素を多く含んでいます
静脈血は還元ヘモグロビンが多く、二酸化炭素を多く含んでいます。
肺で血液中の赤血球(ヘモグロビン)と肺胞内の酸素が結び
ついて酸化ヘモグロビンになり、全身の各組織に運ばれます。
全身の毛細血管でのガス交換により、酸素が離れて還元ヘモ
グロビンになります。
末梢組織でのガス交換(内呼吸・組織呼吸)
血液中に溶け込んだ成分は組織液内に移動した後、細胞内に
取り込まれます。
毛細血管の細胞の隙間を通してガス交換(酸素と二酸化炭素の
やりとり)や栄養素や老廃物などの運搬が行われています。
細胞が排出した二酸化炭素や老廃物などの一部は毛細血管に
入って静脈血内に取り込まれ心臓に還ってきます。
門脈と肝動脈
肝臓は他の臓器と異なり二つの血管(門脈と肝動脈)から
血液を供給されています。門脈は消化管と脾臓から集まった
血液が流れ、肝動脈は心臓から送り出された血液が流れています。
門脈には腸から吸収された栄養素を多く含んだ静脈血が流れています。
門脈と肝動脈を流れる血液は肝臓内の毛細血管を経て肝静脈に
集まり、下大静脈を通って右心房に入ります。
続きはこちらです→ 中心静脈カテーテルの挿入・留置と合併症
◇参考文献
書籍
「人体生理学ノート」金芳堂 循環p79 呼吸p71 p74 p88 p94 p95
「家庭医学大百科」主婦の友社 p302 p303
「最新医学大辞典」
インターネット
ウィキーペディアHP内
ja.wikipedia.org/wiki/上大静脈
ja.wikipedia.org/wiki/下大静脈
ja.wikipedia.org/wiki/大静脈
ja.wikipedia.org/wiki/毛細血管
ja.wikipedia.org/wiki/門脈