◆中心静脈栄養法のメリット(経腸栄養法との比較)
経鼻栄養法や胃瘻栄養法等の経腸栄養法と比較した場合のメリット
を大まかに挙げています。
●確実な栄養補給が可能
必要なエネルギーや栄養素などを正確に確実に投与できます
経腸栄養の場合は下痢や嘔吐等のリスクがありますが、中心
静脈栄養では必要なカロリーや栄養素などを確実に補給できます。
●緊急時の対応が可能
緊急時の薬剤投与が速やかに確実に出来ます。
緊急時の血管確保としても利用できます。
薬液を確実に投与できます。
他にも中心静脈圧などの測定などあります。
●消化管の安静保持が出来る
消化器管への負担が軽減できます。
消化器系に問題があったり安静が必要な場合は経腸栄養法は
困難又は出来ません。
●管による消化管などへの刺激や違和感、負担がない
●栄養補給時に伴う下痢や腹痛、不快感などの腹部症状がない
◆中心静脈栄養法のデメリット(経腸栄養法との比較)
経鼻栄養法や胃瘻栄養法などの経腸栄養法と比較した場合のデメリ
ットを大まかに挙げています。
●感染を起こし易い
中心静脈のルートを介しての感染のリスクが高くなります。
経腸栄養と違い、太い血管内に直接カテーテルが挿入されて
いるため感染を引き起こすリスクが高くなります。
●血栓が生じやすい
血栓症のリスクがあります。
血液の逆流等がある場合は血栓を形成しやすくなります。
●代謝による合併症のリスクが高い
血糖のコントロールが難しい、肝機能障害のリスクがある、
ビタミン類などが欠乏しやすいなど。
●自然な消化吸収の機能が低下し易い
消化管の自然な働きが妨げられます。
長期間消化管が正常に機能していないと、腸粘膜の萎縮等で
腸内環境の変化がおこり様々な弊害をもたらすリスクが高くなります。
●事故抜去しやすい
胃瘻と比較した場合は体外に出ている管が長い為、抜ける
リスクが高くなります。
●中心静脈を挿入する時のリスクが高い
経鼻胃管と比較すると合併症のリスクが高い。
例えば、気胸や空気塞栓、動脈損傷などがあります。
●管理が煩雑
●行動が制限される
経腸栄養法では投与時間以外は特に行動は制限されません。
中心静脈栄養法の場合は通常は24時間の投与のため経腸栄養
よりも不自由になります。
中心静脈栄養法(高カロリー輸液)は病態等の面からだけでなく
本人や家族の希望、経済的な面からも考慮される場合もあります
例えば本人が経鼻胃管や胃瘻をどうしても挿入したくない場合は
静脈栄養の方法をとることもあります。
最終的な判断は医師に委ねられますが、消化管が正常に機能して
いる様であれば、経腸栄養法を選択するほうが体にはより自然な
機能が保たれることになります。
長期絶食による消化器官への主な弊害
消化管粘膜の萎縮、胆汁、膵液などの減少で全身状態を悪化
させるリスクが高くなります。
胆汁の鬱滞で胆石症や胆のう炎等のリスクが高くなります。
長期絶食時の腸内の変化
長期間消化器系が正常に機能していないと腸粘膜の萎縮が起きます。
粘液の分泌量が減少し腸の動きも悪くなり、腸管内の環境も変わります。
異常な細菌が増殖しやすくなり、腸粘膜から吸収され全身
状態を悪化させるリスクが高くなります。
胆汁鬱滞(うったい)について
食べ物が胃の中に入ることにより胆嚢が収縮し胆汁が十二指
腸内に押し出されます。
絶食状態が続くと胆嚢の収縮が行われ難くなり、胆汁が胆嚢内
に留まりやすくなります。
胆汁の停滞が長期間続くと胆石が出来やすくなったり炎症を
引き起こしやすくなります。
続きはこちらです→ 中心静脈栄養法の具体的なケア
◇参考文献
書籍
「ナース必携最新基本手技AtoZ」保存版 p107 p172 p173
発行・照林社 発売・小学館
「全科術前・術後マニュアル」 p72
発行・照林社 発売・小学館
「最新医学大辞典」医歯薬出版株式会社
インターネット
日本臨床栄養代謝学会サイト内
静脈経腸栄養ガイドライン-第3版-
https://www.jspen.or.jp/wp-content/uploads/2014/04/201404QR_guideline.pdf