◆浸透圧が高いとどうして下痢をしやすくなるの?
●原因
浸透圧が高い栄養剤が腸管内に入ると、体が浸透圧を平均化
しようとします。
即ち、腸管内に腸管壁から体内の水分(消化液等)を引き出し
浸透圧を同じようにしようと働きます。
そうなると腸内の溶液が多くなります。
又腸の蠕動運動が亢進し下痢を引き起こしやすくなります。
*下痢の原因は浸透圧以外にもいろいろあります。
●対策
浸透圧の高い栄養剤(高張液の栄養剤)を使用することにより
下痢が誘発されるようであれば、注入速度を落としたり、
半固形化剤や固形化剤などを使用したりして様子をみます。
浸透圧のさほど高くない又はほぼ同じ栄養剤を選択する方法も
あります。
◆栄養剤を白湯などで薄めていいの?
栄養剤を薄めて使用するケースもあると思います。
上記の対策が出来ない又は効果がない場合や栄養剤を試験的に
注入する場合など特別なケースに限り薄めて注入するのも一つ
の方法だと思います。
必要な成分やカロリーを全て注入する場合は薄めた分、量が
多くなるため時間がかかります。
注入時間が長くなると菌が増殖するリスクが高まります。
又、量が多くなるため食道への逆流のリスクも高くなります。
病態により水分制限のある場合も注意が必要です。
血液(血漿)の浸透圧
280~300mOsm(ミリオスモル)/L
*文献により多少異なります。
Osm(オスモル)/L mOsm(ミリオスモル)/L
溶液の浸透圧を表す単位。
一定量の液体に含まれる粒子の数の単位。
等張液
血液(血漿)の浸透圧とほぼ同じ。
0.9%の食塩水と同じ(生理的食塩水・生食)。
5%ブドウ糖液、乳酸リンゲル液 とほぼ同じ。
高張液
血液(血漿)の浸透圧より高い。
低張液
血液(血漿)の浸透圧より低い。
浸透圧を左右する溶質
浸透圧は主に電解質、ブドウ糖などの濃度により左右される。
中でも最も浸透圧に関与している溶質は、Na+(ナトリウムイオン)。
ナトリウムが多いと浸透圧も高くなる。
浸透圧比
生理的食塩水(約286mOsm・血漿とほぼ同じ)を1として
比較した場合の浸透圧。
浸透圧が600mOsmだと、浸透圧比は約2。
体液の浸透圧
体液には細胞内液と細胞外液があります。
通常は血漿と同じ。
生理食塩水とほぼ同じ。
濃度と浸透圧の関係
温度が一定のときは通常は濃度が高いと浸透圧も比例して高く
なります。
続きはこちらです→ 経腸栄養剤の投与量について
◇参考文献
書籍
人体生理学ノート(金芳堂)p103~p105
最新医学大辞典(医歯薬出版株式会社)p160,p728
インターネット
日本流動食協会HP内・流動食の使い方
www.ryudoshoku.org/tukaikata_5p.html
濃厚流動食品と浸透圧について
www.ryudoshoku.org/sintoatu_2p.html
www.ryudoshoku.org/sintoatu_3p.html
ウィキーペディア
ja.wikipedia.org/浸透圧