口腔内の清潔保持


人工呼吸器装着時の主な合併症

には、人工呼吸器関連肺炎、

肺胞内圧の上昇による損傷

無気肺、多臓器への影響、

酸素中毒、気道のトラブル

精神的ストレスによるもの等

様々な合併症があります。

 

ここでは人工呼吸器関連肺炎

(VAP)の防止・対策の一つ

である口腔内の清潔保持についてまとめてみました。

 

◆口腔内の清潔保持の必要性

口腔内や咽頭などに存在する菌

が気管カニューレのカフと気管

壁の隙間から垂れこむことで

人工呼吸器関連肺炎(VAP)が起きます。  

その為、肺炎の原因となる細菌

などをできるだけ少なくする必要があります。

口腔、咽頭に存在する細菌等を

少なくする為には口腔内の清潔保持が欠かせません。

 

口腔内の清潔保持は肺炎防止

以外にも虫歯や虫歯の増悪、

歯周病、口内炎等の口腔内の

トラブル防止にも必要になります。

又、口腔内を刺激することに

より血行促進、唾液の分泌促進

嚥下機能の向上、爽快感などを

与え心理面でもプラスになります。

 

 

◆口腔内で細菌などが増殖する原因

●口腔内の乾燥

口腔内が乾燥する原因には唾液

の分泌低下や開口の持続、薬の副作用等があります。

口腔内が乾燥すると歯垢や歯石

舌苔の堆積などが起こりやすくなります。

歯垢(デンタルプラーク・バイオ

フィルム)や舌苔等は細菌の温床となります。

唾液の分泌量が減少すると殺菌

抗菌作用、浄化作用等が低下し

細菌が繁殖しやすくなります。

乾燥状態が長く続くと粘膜が損傷しやすくなります。

 

経口摂取が行われないと唾液の

分泌が減少し口腔内が乾燥しやすくなります。

その為、食べなくても口腔内のケアは必要になります。

 

●口腔内のトラブル

虫歯、歯周病、口内炎、粘膜

の損傷等がある場合は細菌が

増殖しやすくなり感染のリスクが高くなります。

特に歯周病菌は口腔内の炎症

だけではなく、誤嚥性肺炎や

細菌性心内膜炎などの全身疾患にも直接影響を及ぼします。

 

 

◆口腔ケアの方法 概要

対象者の状態により多少異なる

部分もありますが基本は歯垢や

舌苔の除去と乾燥防止の為の対策になります。

 

歯垢(デンタルプラーク・バイオ

フィルム)に対しては歯ブラシや

歯間ブラシ等を使用して除去します。

歯と歯肉の間は電動ブラシ等を

使用して小刻みにブラッシングします。

歯と歯の間は歯間ブラシやデン

タルフロスなどを使用して歯垢を除去します。

 

舌苔に対しては専用の舌ブラシ

や粘膜ブラシ(スポンジ)などを使用します。

舌ブラシは舌の奥から手前に向けて軽く擦ります。

 

乾燥防止に対しては唾液の分泌

促進と保湿剤の使用などがあります。

唾液の分泌を促す方法には、

唾液腺のマッサージと口腔内のマッサージがあります。

 

唾液腺のマッサージは耳下腺や

顎下(がっか)腺、舌下腺等を

刺激することで分泌を促進します。

例としては、耳下腺の場合は

耳たぶの下を人差し指で押しながらぐるぐる回す。

顎下腺の場合は、あごの骨の

デッパリ(えら) から少し内側

を親指で押しながら回す。

舌下腺の場合は顎の下(舌の根元

付近)を親指で押す等の方法があります。

 

口腔内のマッサージの例として

は湿らせた綿棒やスポンジブラ

シ、ソフトガーゼ(不織布ガー

ゼ)などを使用して歯茎や

口腔内の粘膜を軽くなでる感じでマッサージします。

 

保湿剤の使用方法は商品の種類

により異なりますが、ジェルを

使用する場合の一例としては、

スポンジブラシなどを使用して

適量を舌や口腔粘膜全体に満遍なく塗布します。

 

口腔ケア実施時は気管カニュー

レのカフ圧を少し高くして洗口

液などが肺の方へ流入しないようにします。

ケア後は必ず適正なカフ圧に戻します。

 

唾液の役割

唾液は唾液腺から分泌される分泌液。

耳下腺、顎下腺、舌下腺など

から分泌されるのが唾液になります。

唾液の主な働きには殺菌・抗菌

作用、浄化作用、消化作用、

再石灰化作用などがあります。

 

唾液の中に含まれている主な成分

プチアリン

デンプンを分解する消化酵素です。

唾液アミラーゼのことです。

胃液の強酸性の塩酸により働きが強くなるようです。

 

ムチン

ネバネバした糖タンパク質です。

唾液が粘り気があるのはムチンが含まれている為です。

食べ物を唾液でまとめてバラバラにならないようにします。

食べ物の表面を滑らかにします。

粘膜を保護する作用もあります。

 

ラクトフェリン、ヒスタチン、

ペルオキシダーゼ、リゾチーム

殺菌や抗菌作用があるため口腔内を清潔に保ちます。

 

 

侵襲的人工呼吸療法を受けている方の唾液の分泌

口腔内の刺激や咀嚼運動などに

より唾液腺が刺激されると唾液

の分泌量は多くなります。

気管カニューレから人工呼吸器

を装着している方は経口摂取を

していない為、唾液の分泌量が減少します。

 

舌苔とは?

舌の上面に付着する白い苔状のもの。

舌表面に、剥がれた粘膜上皮や

細菌、食べカスなどが付着したものです。

健康な人にも見られる舌苔は、

薄く白い状態になります。

舌苔が白く薄いようであれば、

無理に取り除く必要はありません。

 

口腔内の保湿剤について

口腔内の乾燥を予防するための保湿剤になります。

商品の例としては、

バイオティーン(オーラル

バランスジェル)

ビバジェルエット

バイオティーンマウスウォッシュ

リフレケアH口腔ケア用ジェル

ケアハート口腔専科お口潤うジェルやスプレー

ペプチサルジェントルマウスジェル

オーラルピース歯みがき&口腔ケアジェル

など他にも様々な商品が販売されています。

続きはこちらです→ 口腔ケアの必要物品と準備など

 




人工呼吸器装着時の介護 項目一覧


◇参考文献

書籍

「呼吸サポートチームのための呼吸管理セーフティーBOOK」

メディカ出版 p142~p144 p181~p182

「人工呼吸ケアのすべてがわかる本」照林社 p229~p230

「実践できる在宅看護技術ガイド」学研 p151~p154

「介護職員のための医療的ケア」ミネルヴァ書房 p71~p72

 

インターネット

ウィキペディアHP内

//ja.wikipedia.org/wiki/口腔バイオフィルム

//ja.wikipedia.org/wiki/歯周病

//ja.wikipedia.org/wiki/舌苔