◆浸透とは?
濃度の異なる溶液を半透膜で隔てた時、濃度の低い方の溶媒が
濃度の高い溶液のほうに移動すること。
例
濃度の違う砂糖水を半透膜で仕切った場合は、濃度の低い方の
水(溶媒)が、半透膜を通って、濃度の高い砂糖水(溶液)
のほうへ移動します。
*溶質が移動することを透析
◆浸透圧とは?
溶媒、溶質が同じで濃度の異なる溶液を半透膜で隔てた時に
溶質が半透膜を通らない大きさの場合は半透膜の性質上、
溶媒(水など)が膜を通して移動(浸透)し始めます。
この時に濃度の高い溶液のほうにかかる圧を浸透圧といいます。
同じ濃度の場合は浸透圧は生じませんが濃度が異なる場合は
低い方から高いほうへ溶媒が浸透する割合が高くなります。
濃度の低いほうの溶媒(水等)が移動する量と濃度の高い方の
溶媒(水等)が移動する量に差が出てきます。
濃度の高い溶液は溶質が多い為、その分溶質が溶媒の移動を
邪魔します。
反対に濃度の薄い溶液は溶質の量が少ない分、溶媒の移動が
よりスムーズに出来ます。
その為、溶媒の移動の量に差が出てきます。
濃度の低いほうの溶媒が濃度の高いほうへ移動する量が多くなります。
そうなると当然、濃度の高い溶液の量が増えます。
浸透圧が高ければ高いほど、すなわち濃度が高ければ高いほど
水などの溶媒が移動する量が増えることになります。
浸透がすすむと、濃度の高いほうの溶媒が増えると同時に
濃度は徐々に低くなります。
反対に薄い方の溶液は溶媒が少なくなるため、徐々に濃くなります。
同じ濃度になった時点で浸透圧は生じなくなります。
つまり浸透圧が平衡状態(同じ)になります。
浸透がすすむと、濃度の高い溶液の量が徐々に増えます。
増えた分、薄くもなりますが、液面も高くなります。
反対に薄いほうの溶液は徐々に減ります。
溶媒が減った分、濃度がより高くなり、液面は低くなります。
液面の高さに差が出てきます。この差が浸透圧の大きさ?
になる・・・・ということではないでしょうか??
*文献により表現はいろいろあるようです。
同じ濃度になろうとする力、浸透を阻止する力、濃度の高い溶液に
かかる圧力などあるようです。
◆浸透圧の単位
Osm(オスモル)
mOsm(ミリオスモル)
●重量オスモル濃度
Osm/kg H2O
mOsm/kg H2O
溶液の水1kgが持つ浸透圧で、溶質の分子数又はイオンの
モル数・ミリモル数。
*浸透圧計で測定
●容量オスモル濃度
Osm/L
mOsm/L
溶液(溶媒と溶質)1L が持つ浸透圧で、溶質の分子数又は
イオンのモル数・ミリモル数。
*計算で割り出します。
◆経腸栄養剤の濃度と浸透圧
●経腸栄養剤の濃度(エネルギー密度)
1kcal/mlの栄養剤が多く発売されています。
粉剤のものは水や微温湯などで調製します。
他に1.5kcal/ml 1.6kcal/ml 2.0kcal/ml 等があります。
*水などの量を加減して濃度を調節する場合もあります。
●浸透圧別の経腸栄養剤の種類(1kcal/mlに対しての浸透圧)
浸透圧の高い栄養剤
医薬品 例
エレンタール ヘパンED エンテルード ツインライン等。
浸透圧がさほど高くない栄養剤
医薬品 例
ラコール ハーモニック エンシュアリキッド等。
*製品により同じ濃度(1kcal/ml)でも浸透圧は異なります。
*同じ製品でも濃度が高いと浸透圧も比例して高くなります。
*血漿の浸透圧と比較しています。
逆浸透とは?
例えば、水だけの純溶媒と砂糖水を半透膜で隔てた場合は
半透膜の性質上、水は通しても砂糖は通しません。
その為、水の方には溶質(砂糖)は通過しないため濃度は同じです。
砂糖水の方には、水が移動してきますので溶液は増えます。
同時に濃度は低くなります。
低くなりますが両方の液体は同じ濃度になることはありません。
砂糖水の容量が増えた分、砂糖水の液面が高くなります。
反対に水だけのほうの液面は低くなります。
この差が浸透圧の大きさになります。
砂糖水の液面から半透膜にかかる圧力も大きくなります。
水のほうから半透膜を隔てて砂糖水にかかっていた浸透圧と
平衡状態になると浸透圧が生じなくなります。つまり、
水からの浸透が阻止されることにもなります。
さらに砂糖水の液面から浸透圧を超える圧力を加えた場合は
砂糖水のほうの溶媒である水が半透膜を通して水だけの液体の
方へ押し出されます。
これを逆浸透といいます。
この原理を利用して海水から真水を作り出すことが出来ます。
血液(血漿)の浸透圧
280~300mOsm(ミリオスモル)/L
*文献により多少異なります。
Osm(オスモル)/L mOsm(ミリオスモル)/L
溶液の浸透圧を表す単位。
一定量の液体に含まれる粒子の数の単位。
等張液
血液(血漿)の浸透圧とほぼ同じ。
0.9%の食塩水と同じ(生理的食塩水・生食)。
5%ブドウ糖液、乳酸リンゲル液 とほぼ同じ。
高張液
血液(血漿)の浸透圧より高い。
低張液
血液(血漿)の浸透圧より低い。
浸透圧を左右する溶質
浸透圧は主に電解質、ブドウ糖などの濃度により左右される。
中でも最も浸透圧に関与している溶質は、Na+(ナトリウムイオン)。
ナトリウムが多いと浸透圧も高くなる。
浸透圧比
生理的食塩水(約286mOsm・血漿とほぼ同じ)を1として
比較した場合の浸透圧。
浸透圧が600mOsmだと、浸透圧比は約2。
体液の浸透圧
体液には細胞内液と細胞外液があります。
通常は血漿と同じ。
生理食塩水とほぼ同じ。
濃度と浸透圧の関係
温度が一定のときは通常は濃度が高いと浸透圧も比例して高く
なります。
半透膜とは?
一定の大きさ以下の分子やイオンを通す膜。
セロファン膜、人体の細胞膜や血管壁など。
溶媒
固体や液体、気体などを溶かす液体。
溶媒の代表的な液体が水。
溶質
溶媒に溶けている成分(固体、液体、気体)。
溶液
溶媒と溶質からなる液体。
砂糖水の場合は水が溶媒、砂糖が溶質、砂糖水が溶液。
続きはこちらです→ 浸透圧と下痢
◇参考文献
書籍
人体生理学ノート(金芳堂)p103~p105
最新医学大辞典(医歯薬出版株式会社)p160,p728
電子辞書・広辞苑
溶媒、溶質、浸透圧、浸透 半透膜
インターネット
日本流動食協会HP内・流動食の使い方
www.ryudoshoku.org/tukaikata_5p.html
濃厚流動食品と浸透圧について
www.ryudoshoku.org/sintoatu_2p.html
www.ryudoshoku.org/sintoatu_3p.html
ウィキーペディア
ja.wikipedia.org/浸透圧
/ja.wikipedia.org/溶液
ja.wikipedia.org/半透膜
ja.wikipedia.org/逆浸透膜